QLOOKアクセス解析
TOP

TOP ≫ コラム・特例民法法人の共済事業(1) ≫

特例民法法人の共済事業(1)
―保険業法に基づく移行可能性と公益目的支出計画―

特例民法法人の共済事業に関する特例措置を定めた保険業法の改正法案は、H22.11.4に衆議院の本会議で修正議決され、参議院に付託された。修正内容は認可特定保険業者の制度見直し時期について、5年後を目途とする旨、明示したことである。法案の審査にあたった衆議院の財務金融委員会における採決の結果が全会派一致であったことから、法案の成立がほぼ確実なものとなったとみて良いだろう。共済事業を営む特例民法法人の関係者においては、長らくヤキモキさせられたので、ホッと一安心であるに違いない。今後、この法律成立し公布されれば、その6ヵ月後から施行ということになっており、その施行日までには認可特定保険業者の監督を行うこととなる各省庁による共同省令が発布されるそうなので、早ければH23年半ばには認可特定保険業者の認可申請を行うことが出来るだろう。
これまで、国会審議が進まないために団体内部における共済事業継続のための検討も遅れがちとなり、移行に向けての具体的な準備が不十分なままとなっているケースが多いと思われるので、いよいよ本格的に始動すべきときが到来したと言える。共済事業の継続を意図する特例民法法人にあっては、新公益法人制度改正への対応期限(H25.11末)が迫る中、効率的な対応が必要となっている。
 
ところで、共済事業を行う特例民法法人の公益認定が難しいことは、すでに明らかなものとなっており、一般社団法人もしくは一般財団法人としての認可を受けて共済事業を行う必要がある。その際、ポイントとなるのがいわゆる「公益目的支出計画」の策定だ。「公益目的支出計画」とは、これまで公益法人としての優遇措置を受けてきた団体が一般法人として営利活動を行うに際し、残余財産の公益目的への引き渡しを義務付ける制度だ。共済事業を継続しようとする一般法人は、公益3法のうちの「整備法」に基づいて、ほぼ例外なくこの計画の策定と確実な実行が求められることになる。
そして、この「公益目的支出計画」の対象として支出が義務付けられるものの総額が「公益目的財産額」であるが、これは一般法人への移行時における純資産(正味財産額)を時価ベースで評価したものにほぼ等しい。したがって、移行時の純資産額のほぼ全てについて、計画に基づく外部流出の実行を余儀なくされるのであり、共済事業を行う団体にとっては大問題なのである。共済事業を継続するためには、将来の支払いのために積み立てるべき責任準備金とともに、予期せぬリスクに備えて十分な支払余力を確保しておくことが重要なポイントになるはずだ。そして、それらの財源準備は共済関係負債を貸借対照表の負債の部に積み立てることによって行い、「公益目的財産額」の算出対象から除外しておくことが必要なのである。
将来の支出または保全が義務付けられていると考えられる金額については、負債としての計上を行わなくとも「公益目的財産額」から控除することが認められている。しかし、この控除制度の利用には大変な落とし穴がある。確かに「公益目的財産額」を減らし、「公益目的支出計画」の対象としないことが出来る。しかし、移行時の累積所得金額課税の対象になってしまうのだ。責任準備金等の保全は、負債計上に限るのである。
「公益目的支出計画」は実施期限についての制限がないことになっているので、例えば公益目的の赤字事業を長期間継続実施することにより、公益目的支出計画とすることは可能である。この場合、資金の外部流出も単年度で見れば少額になることもあり得るので、共済関係負債の計上をせずとも共済事業運営には大きな問題はないと考える団体があるかも知れない。しかしながら純資産額に比較して赤字幅が小さい場合などは、単年度負担が小さいことの裏返しとして、公益目的支出計画の実施期間が極めて長期に及ぶ結果、100年を超えるような状態になることも十分考えられる。こうした場合、「不相応に長期」なケースに相当するとして、認可当局から計画の見直しを求められる可能性もあることに留意しなければならない。
さらに、保険業法の改正法案に基づき特例措置の適用を受けて当面の事業継続が許されたとしても、それは当面の間に限られた措置であることを忘れてはならない。衆議院の財務金融委員会における金融庁の答弁によれば、認可特定保険業者に対しては、ソルベンシー・マージン比率規制について、健全性の基準としての根拠規定は設けるものの、これも「当面の間」は実態把握にとどめるとのことである。しかし、その「当面の間」が過ぎた後のことを良く考えておく必要がある。増資などによる支払余力の増強が難しい一般法人にとって、「当面の間」が過ぎるまでに支払余力の向上を図ることが可能なのだろうか。計画的な視点を持つかどうかが、重要な別れ道となる。
共済関係の負債計上を行わず、純資産のほぼ全てを公益目的支出計画の対象にしたまま、さらなる制度改正があれば、当該団体はソルベンシー・マージン比率(もしくは支払余力比率)がきわめて低い団体であるとして経営の健全性に重大な問題があると指摘されかねない。公益目的支出計画の対象とした純資産は、計画的な支出が義務付けられているため、常識的にみればソルベンシー・マージン比率計算上の支払余力に算入されないと考えられるからである。仮に保有契約数の大幅な減少や給付率の上昇などのマイナス要因が重なったりすれば、極めて困難な状況に陥る可能性があることを認識しておかねばならないのだ。
共済事業を営む特例民法法人は、直面する課題として共済事業継続のための制度改正対応に加え、長期的な視点でより本質的な課題把握が重要であることに留意する必要がある。

モバイルサイト

エース・ブレインスマホサイトQRコード

エース・ブレインモバイルサイトへはこちらのQRコードからどうぞ!